FUJIFILMのXマウントにおいて、“ポートレートレンズ”といえば「XF56mm F1.2 R」と「XF90mm F2 R LM WR」で悩む人も多いと思う。
僕自身、この両者のどちらを購入するかかなり悩んだものだ。結果的には両方のレンズを購入したのだが。
実際にこれらのレンズを比較した先人たちのレビューも多いが、実際に使い比べてみないと分からなかった使用感なども多い。
今回はそれも含めて、僕なりにこれら二つのレンズを比較レビューしてみたいと思う。
XF56mmとXF90mmのスペック比較
気になっている人はおそらく知っているだろうが、まずはサラッとスペックを。
XF56mm F1.2 R | XF90mm F2 R LM WR | |
---|---|---|
焦点距離 | 換算 85mm相当 | 換算 137mm相当 |
撮影距離範囲 | 0.7m 〜 ∞ | 0.6m 〜 ∞ |
外形寸法 (最大径×長さ) | Φ73.2mm × 69.7mm | Φ75.0mm × 105mm |
質量 | 405g | 540g |
フィルターサイズ | Φ62mm | Φ62mm |
XF56mmもXF90mmもFUJIFILMらしい金属製の鏡筒で、もちろん両レンズともに絞りリングを搭載している。XF90mmの方が 30mmほどレンズが長く、約135g ほど重い。
ちなみに絞りリングの感触は、XF56mmは “ややソフトなカリカリカリ“ っとした感じで、XF90mmは “ドライなカカカ” っとした感じ。個人的にはXF56mmの方が好みの感触だ←
レンズフードを装着するとXF90mmの長さがさらに際立つ。
レンズフードのデザインはどちらも可もなく不可もなくと言った感じ。XF56mmに関しては、「XF23mm R」用のレンズフード「LH-XF23」が装着可能なので、デザイン重視の場合はXF56mmを選ぼう。
フィルターサイズは両レンズとも62mmでレンズ自体の太さはそこまで変わらず、どちらもカメラを構えた際の手の収まりは良い。
どちらのレンズもフォーカスリング、絞りリングの操作性も全く問題ない。
僕がメインで仕様している「X-Pro3」に装着するとこんな感じ。
XF56mmはコンパクトで、X-Pro3のようなグリップの小さいカメラでも比較的安定した持ち心地だ。
XF90mmはレンズ自体が長いため、カメラに装着すると数値以上の重量感を感じる。
X-H1やX-T4は比較的グリップが大きくXF90mmも安定するが、X-EシリーズやX-T2桁シリーズといった小型のカメラでは少し安定感に欠ける。
使用しているカメラもレンズ選びでは重要なポイントかもしれない。
作例比較
ボケ感や圧縮効果の程度を比較するために、気になる比較作例を準備してみた。
大まかではあるが同じ構図で撮影し、キャプションに被写体までの距離を記載しているので参考までに。
大人の事情で顔出しはできないが、悪しからず。
まずはよくある全身を写した縦構図の作例。
中望遠の画角で全身を写そうと思うと被写体からある程度離れる必要があるが、XF56mmでは5m、XF90mmでは8m程度となる。
背景が植物のため少しザワついてはいるが、ボケ感は両レンズとも良いように思う。
次は横構図で座っている状態を写したショット。
XF90mmの方が圧縮効果が強いため、奥のベンチや植物との距離感が違う。XF56mmでは写っている左側の葉っぱもXF90mmでは写っていない。
これは僕がよく撮りがちなバストアップでの写真。こちらも背景や柱の距離感で圧縮効果の程度がわかりやすい。
拡大してみないとわかりにくいが、XF56mmではカメラのロゴの部分にわずかにパープルフリンジが生じている。XF56mmはハイライト部にフリンジが生じやすいのが少し弱点かもしれない。
お次は手元だけをクローズアップした一枚。
ここまで被写体に近づくと背景のボケ感も違いがわかりにくいが、XF56mmの方がわずかに柔らかい印象を受ける。
最後は唯一 F5.6 まで絞った作例だ。
遠景で全身を写した写真だが、ここまでくるとXF90mmは被写体からかなり離れないといけないため、少ししんどい。
モデルとカメラマンという関係で撮影しているならまだしも、スナップポートレート的に使うにはXF56mmの方が使いやすそうだ。
使用感比較
ここで、両方のレンズを使用してみて感じた使用感を「利便性」「携帯性」「使いやすさ」「描写」に分けてまとめてみた。
利便性
利便性というか応用力の高さという点では、XF90mmの方が優れていると思う。
60cmという最短撮影距離は簡易的なマクロレンズとしても使えるし、換算137mm相当の画角は望遠レンズの代わりとして活躍する場面も多い。決してそれらのレンズに代替できるものではないが、マクロも望遠も持っていない僕はよく助けられたものだ。
XF56mmは最短撮影距離が70cmということもあり「寄れない」と評価されることも多く、画角的にも遠くのものを写すには少し物足りない。
また、AF性能もかなり差があり、リニアモーターを搭載しているXF90mmはAFが早く、AF-Cで動体を追うのも十分可能だ。XF56mmはそこまでAFが早くないので、動体撮影には不向きだ。
加えて、XF90mmは防塵・防滴の仕様で非常にタフな造りだ。様々なシチュエーションに対応してくれるのは間違いなくXF90mmだろう。
携帯性
携帯性に関してはいうまでもなく、XF56mmに分がある。
両者の最大径はそれほど大きく変わらないが、長さは3cmほど違う。質量に関しては135gの差だ。これだけサイズ感が違うと、使用時の手の収まりや取り回しがかなり違ってくる。
また、個人的に気になったのはカメラバッグへの収まりの悪さである。XF90mmのような長尺のレンズは決められたスペースに収まりにくかったり、カメラに装着したままの収納では特に困る事が多かった。
XF56mmは少しずんぐりとしたシルエットであるが、そこまで長さのあるレンズではないため携帯性は高い。
使いやすさ
画角の好みやスナップ、ポートレートなどの撮影スタイルによってかなり変わってくると思うが、旅行や外出先で写真を撮るといった一般的なユーザー目線で評価すると、使いやすいのはおそらくXF56mmだろう。
前述したようにXF90mmは様々なシチュエーションで活用することができるが、換算137mm相当という望遠寄りの画角は日常使いするには少々扱いにくい。
例えば曇りの日や夕方などの薄暗くなってきたシチュエーションでは手ブレにかなり気を使わないといけない。ISO値を上げないと厳しいなと思う時も多い。
また、被写体との距離も必要となるため、室内などの狭い場所や混雑した場面でも上手く使うには工夫が必要だろう。
対してXF56mmは換算85mm相当、開放絞りがF1.2という比較的扱いやすいスペックだ。構図が整理しやすいし、薄暗いシチュエーションでもシャッタースピードを稼ぐことができる。
僕の技術的なの問題でもあるが、手振れ補正を搭載している「X-H1」を使用していた時はXF90mmを多用していたが、「X-Pro3」に変えてからは出番がかなり減ってしまった。やはり大きめのレンズには手振れ補正としっかりしたグリップが欲しいなというのも本音だ。
描写
XF90mmはレンズ性能を表すMTF曲線とやらも評価が高く(僕はよく分からないけど)、撮影した写真をみても、画質は間違いなくXF90mmが上だ。
XF56mmは絞り開放付近ではフリンジが出やすいし、ゴーストなんかも比較的生じやすい。
XF90mmはそういったクセがなく、非常に優等生だ。玉ボケなんかも隅々まで綺麗な円形となる。
そして、この二つのレンズは描写もかなり違うように感じる。
個人的な感覚ではあるが、XF56mmはきちんと解像しつつも線の細い繊細な写りで、柔らかい仕上がりな印象を受ける。それに対して、XF90mmはキレのある高い解像度が特徴で、XF56mmと比べると線が太く力強い印象の写りだ。
女性のポートレートを撮る場合はXF56mmの柔らかい描写も魅力的だが、オールマイティーな画質重視ならXF90mmをオススメする。
XF56mmとXF90mm、どちらが“買い”なのか
レンズを購入する際にこれらのレンズが比較されるのは“ポートレート”というジャンルによく使用される「中望遠の画角」と「明るい開放F値」という特徴があるからだと思う。
ただ、実際に比較してみると、画角といい、開放F値といい、レンズのキャラクターといい、全くと言っていいほど異なる特徴をもったレンズだ。
僕の感覚としては、「扱いやすいXF56mm」「本気撮りのXF90mm」といった感じだ。
やはり、画角やF値などのスペック的にはXF56mmの方が日常的に扱いやすいが、インパクトのある写真を撮るならXF90mmの方が打率が高い。
換算137mmの画角は被写体のみを強調するのに優れており、望遠域ならではの圧縮効果、抜群の解像感もあり、スナップよりは “作品撮り” のような場面で活躍することが多かった。
ただ、「自分のパートナーとの日常を撮る」というぼくの撮影スタイルではXF56mmの方が出番が多いのは確かだ。
ポートレートを撮るという点ではどちらも優れたレンズであるが、どちらかのレンズを購入する場合には自分の用途や撮影スタイルを考えた上で購入することをオススメする。
コメント
はじめまして。FUJIFILM大好きユーザーです。
90mmいいですよね。肌の感じが浮き上がって本当に素晴らしい描写をしますよね。
ただ、子供撮りだと離れないといけなくて危ないので手放してしまいました( ; ; )
いつか買い戻したいレンズです!
またお邪魔しますね。