標準域のズームレンズは各社ハイスペックなレンズがラインナップされているが、フルサイズ用の大三元ズームレンズとなると「デカい・重い・値段が高い」というのがお決まりのパターンだ。
そんな中、大三元ズームレンズの概念を覆すようなレンズがSIGMAから発売されている。
今までは画質重視で単焦点レンズ派だった筆者だが、実用性と描写力の高さからすっかりお気に入りになった万能レンズだ。
今回はそんなSIGMAの「28-70mm F2.8 DG DN Contemporary」(Lマウント版)を購入したので、作例と共にレビューしていきたい。
28-70mm F2.8 DG DN Contemporaryの概要
「28-70mm F2.8 DG DN Contemporary」はSIGMAの標準ズームレンズだ。
同社の標準ズームレンズには「24-70mm F2.8 DG DN Art」というレンズも存在するが、広角側の画角を変更することで、F2.8という大口径でありながらフルサイズ用のズームレンズとは思えないほどの携帯性を実現している。
レンズ構成枚数 | FLD:2枚、SLD:2枚、非球面レンズ:3枚 |
焦点距離(画角) | 28mm〜70mm(75.4°〜34.3°) |
最短撮影距離 | 19cm(W)ー 38cm(T) |
フィルター径 | Φ67mm |
サイズ | Φ72.2mm × 101.5mm |
質量 | 470g |
レンズの外観としては、真っ直ぐな円筒状のデザインで、Contemporaryを表すシルバーの「C」バッジが光る。
SIGMAのレンズというと金属質で高級感のあるデザインが特徴だが、このレンズは主にポリカーボネートパーツで造られている。
全体的にマットな質感となっており、チープな印象は受けない。
真冬でもレンズ自体が冷たくなりにくいというのも地味にありがたいポイントだ。
機能に関しては、フォーカス切り替えスイッチがあるのみで、その他にはフォーカスリングとズームリングというシンプルな構成。
フォーカスリングは適度なトルク感で、マニュアルフォーカスでも操作しやすい。
個人的にはズームロックスイッチが欲しかったところだが、このサイズ感なら贅沢は言えないだろう。
ワイド端:28mmでは約10cm程度の長さだが、テレ端:70mmでは2.5cm程度(全長約12.5cm)長くなる。
カメラを操作していて違和感を感じるほどの重心変動もなく、見た目的にも不格好になりすぎない程度だと思う。
このレンズにはやや大きめの花形レンズフードが付属している。
せっかくのコンパクトさが損なわれてしまうのと、フード無しの状態で使っていてもフレアやゴーストが気になったことはないため、筆者は基本的にフードを使っていないが、レンズ保護の観点ではフード装着が推奨だ。
装着例
SIGMA fp
SIGMAfpに装着した場合、全重量は約900g程度であり、フルサイズセンサーを搭載したカメラに大口径のズームレンズを装着しているとは思えないほどの軽さだ。
SIGMAfpのコンパクトさを損わないサイズであり、見た目に関しても同社製品らしいベストマッチ感だ。
Panasonic LUMIX S5
LUMIX S5も比較的コンパクトなボディなため、コンパクトなレンズとの相性も良い。
軽いレンズと大型グリップの組み合わせは安定感もあり、重量的にも快適に常用できる範囲だ。
レンズ内手ぶれ補正は非搭載だが、S5にはボディ内手ぶれ補正があるので、そういった点でも使いやすい組み合わせだろう。
作例
ズームレンズは単焦点レンズに画質面で劣るというのが一般的な見解だが、このレンズは例外だなと感じた。
ありきたりな表現ではあるが絞り解放からシャープな描写で、植物の葉脈や動物の毛並みなども繊細に写す。解像感の高さには驚いた。
コンパクトで軽量なレンズなのでスナップ撮影にも向いている。
以前までスナップ撮影の際には身軽さを優先して軽い単焦点などを使うことが多かったが、このレンズであれば積極的に使いたいと思える携帯性の高さだ。
AFも素早く合焦するため、狙った瞬間を逃さないのもこのレンズの基本性能の高さを感じるポイント。
当然だが、標準域のズームレンズは汎用性が高い。
広角端が28mmだからある程度の風景写真も撮れるし、ズームを調整することで他にもいろんな場面で対応することができる。
前述したように解像度も高く、ズーム全域で安定した描写であるため、風景撮影での描写も申し分ない。
ズームレンズとは言っても、F2.8の大口径なためボケ味は必要十分。
SIGMAらしいキレの良さのおかげか、被写体の立体感も良く表現されている。
あまり出せる作例はないが、ポートレートにも十分使えるレンズだろう。
「24-70mm Art」とどっちが良い?
SIGMAには標準ズームレンズとして「24-70mm F2.8 DG DN Art」というレンズも存在する。
まず機能面に関しては、Artにはフォーカス切り替えスイッチの他にAFLボタンとズームロックスイッチが付いている。
AFLボタンにはカメラ側の設定から様々な機能を割り当てられるため、ちょっとした操作性の向上が期待できる。
ズームロックスイッチは撮影には関係ない機能だが、カメラを携帯している時に勝手にレンズがズームされてしまう煩わしさがない。
サイズや重量は、かなり大きな差があるので使用しているカメラと合わせた際のバランスも考慮した方が良いだろう。
28-70mm(Contemporary) | 24-70mm(Art) | |
焦点距離(画角) | 28mm〜70mm(75.4°〜34.3°) | 24mm〜70mm(84.1°〜34.3°) |
最短撮影距離 | 19cm(W)ー 38cm(T) | 18cm(W)ー 38cm(T) |
フィルター径 | Φ67mm | Φ82mm |
サイズ | Φ72.2mm × 101.5mm | Φ87.8mm × 122.9mm |
質量 | 470g | 835g |
気になる撮影性能だが、ContemporaryがArtの光学系をベースに設計されているだけあって、描写力や画質に関してそれほど大きな差は感じなかった。
ただ、高画素機を使っている場合は、SIGMAの最高性能を謳うArtを使いたいところだ。
この両者のレンズで最も違いを感じるのは、ワイド端の画角の違いだ。
広角側の28mmと24mmはそれほど差がないようで、実はかなり使い勝手が変わってくるポイントだ。
28mmでもほとんど広角撮影を担える画角ではあるが、一歩引けないシチュエーションや、大きな建築物などを撮る際には少し物足りないと感じる場面も多い。
広角レンズを既に持っている場合や、これから購入する予定があるのであればContemporaryで十分だが、広角レンズを追加で1本持ち運んで付け替える手間を考えると多少大きくて重くてもArt1本持つ方が賢明だろう。
※ リンクはSONY Eマウント用のものです
使用感
コンパクトで軽いは良い
このレンズの最大の特徴は、やっぱりコンパクトで軽いことなんだが、まさにこのレンズの良さがそこに詰まっていると思う。
APS-C用の同スペックのズームレンズと同等かそれ以下のサイズ感や重量で、フルサイズ用のいわゆる大三元ズームレンズが使える。
このサイズ感だけで “フルサイズはデカくて重い”っていう概念が吹き飛ぶレンズに仕上がっている。
小型・軽量が特徴のミラーレスカメラが流行の時代にマッチしたズームレンズだ。
標準ズームらしいトータルバランス
携帯性の高さはもちろんだが、絞り開放からのキレの良さやボケ味、AF速度、逆光耐性など、標準ズームに求められる基本性能が非常に高く、トータルバランスが絶妙な優等生レンズだと思う。
当然ながらボケに関しては単焦点レンズに劣るが、ピント面のシャープさのおかげで被写体の立体感もちゃんと表現されるし、SIGMAらしいなんとも言えないクリアな描写が個人的にはすごく好みである。
フルサイズ用の大三元ズームレンズとは思えないサイズや重量、基本性能の高さ、描写力、コストパフォーマンスが共存しているのだから、このレンズを選ばない理由はないだろう。
最後に
標準域のズームレンズというとあらゆる面で実用性が求められるが、実際に使ってみると、このレンズ1本でほとんどの撮影をこなしてしまえるほどのポテンシャルの高さを感じた。
広角域から中望遠域までの焦点距離をカバーしてくれるため、旅行の際もその利便性をありがたく感じる場面は多数あった。
最初にも書いたように「デカい・思い・値段が高い」という大三元ズームレンズの常識を覆し、かつ描写力も妥協しないというSIGMAのこだわりを感じるクオリティの高いズームレンズだ。
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